講演会とムシムシ探検隊3月の模様
3月のムシムシ探検隊は、立川市環境対策課との共催により、講演会「街中の消えていく生き物、増えていく生き物」と観察会を実施しました。
立川市環境対策課と、ムシムシ探検隊のボス隊長からあいさつのあと、さっそく講演会に入りました。
講演会では、日本昆虫協会、トウキョウサンショウウオ研究会にご所属され、TV番組にもご出演されている
川上洋一先生を講師にお迎えして、お話を伺いました。
熱心に講義される川上先生
生物多様性って、そもそも何でしょう?種類が多ければ「多様」なの?という疑問にも、さまざまな事例を示していただき、示唆に富むお話をしていただきました。
タガメやオオムラサキなどの昆虫は、かつては立川市にもいましたが、今はみられません。
自然が失われた(減った)からでしょうか?
では、樹が緑濃く茂っていれば「自然が豊かだ」と言って良いのでしょうか?
一方で、最近になって立川市でみられるようになった生物もいます。
昆虫では、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、クマゼミなどがそうです。
どうして、昔はいなかった生物が、今はみられるのでしょうか?
「地球温暖化の影響」とはよく聞かれるフレーズですが、
なんでも温暖化のせいで片付けるのは正しいのでしょうか?
食草である植物の苗木や花苗の
流通にともなって、昆虫も
一緒に運ばれてくる影響が、実はかなり大きかったりします。
人間活動の影響には違いありませんが、温暖化ではありませんよね。
本来その土地にいなかった生き物は
移入種とよばれ、その土地の生態系がもっていた生物多様性に大きな脅威となります。
海外だけでなく、国外の別の地域からの持ち込みも移入種であり、気をつけなければなりません。
時代とともにみられる生物が変化していますが、その理由を単純に考えてしまうと、本質が見えなくなってしまう、というお話には、非常に考えさせられました。
川上先生のお言葉を借りれば、「人間の活動との関係を考えながら、一種類ごとにその消長を検証していくことが、まちに自然を取り戻すための第一歩」ということになります。
ですから、みられる生物をしっかり
観察して記録し、未来へデータとして残すことは重要ですね。
1時間ほどのお話をいただいた後は、川上先生とともに
フィールド観察会へ。
RISURUホールから歩いて15分ほどの、
矢川緑地へ移動しました。ムシムシ探検隊でも何度か来ているフィールドですが、今回は先生より植生・人間活動・生物種の関係を総合的に解説していただき、単に昆虫の紹介にとどまらない、学びの多いフィールドワークとなりました。
矢川緑地で起きている植生遷移
たとえばこの風景。
コナラ、ケヤキなどの落葉樹を主体とした雑木林に、常緑樹が生えてきています。
このまま手が入らなければ、やがてシラカシやアラカシなどが優占する、常緑樹の林になるでしょう。
関東平野では、植生遷移の最終形(極相:きょくそう)は、このような常緑樹の林です。しかし生物多様性の観点からは「豊かな自然」とは、一概にはいえません。
いま日本で絶滅が心配される生物の多くは、人が手入れした場所…雑木林や里山などにすんでいた生物です。
この風景は、日本の各地で現在進行形で起きていることの縮図とも言えそうです。
さて今回は、矢川緑地の湿地エリアと雑木林エリアの境界を流れる矢川の、川底の石などをみることができ、
水生生物も観察することができました!
ふだんのムシムシ探検では、水に入る機会はあまりないので、貴重な経験ですね。
ミズムシ(ワラジムシのなかま)
まず、この虫、
ミズムシ。
え?水虫?いや、あの、足にできる「水虫」ではありません。
ちなみに「みずむし」という日本語には、3通りの意味があります。
1 昆虫のミズムシ(カメムシの仲間)
2 昆虫ではない虫のミズムシ(ワラジムシの仲間)
3 皮膚にできる水虫(カビの一種)
この写真のミズムシは、上記2のワラジムシの仲間(等脚目:とうきゃくもく)です。大きさは1cmほど。足は7対、14本あります。
この仲間には海辺を走り回るフナムシもいます。ミズムシは淡水産で、かなり富栄養化の進んだ水にも棲めるとのことです。
もうひとつ、水のいきものから。
カゲロウのなかまの幼虫
こちらは
カゲロウの仲間の幼虫です。
成虫はエサをたべず、その寿命は非常に短いもので、はかないものの代名詞ともなっていますが、この幼虫の姿はなかなか力強いですね。
このほか、出始めのナナホシテントウや、朽木の中のカミキリムシ類の幼虫などもみることができました。
平成28年度のムシムシ探検隊は以上となります。
川上洋一先生、貴重なお話をありがとうございます。
平成29年度もムシムシ探検隊は元気に活動してまいります。
また、探検隊でお会いしましょう!!