MushiMushi Tachikawa
教育支援協会東京西
2017-08-27

データベースから見る街中のおもしろ生き物【講演会と観察】の模様

8月も締めくくり。夏休み最後の日曜日は、「データベースから見る街中のおもしろ生き物」と題して、講演会と観察会をひらきました。
立川市環境対策課との協働開催です。
こどもたちからおとなまで、幅広い年代の皆様のご参加をいただきました。

講演会の模様

今回は、本年3月に引き続き、川上洋一先生を講師にお迎えして、お話をうかがいました。
先生は、日本昆虫協会、トウキョウサンショウウオ研究会に所属され、またTV出演等、多方面でご活躍されていらっしゃいます。

前半は、スライドと黒板を使って、1時間ほどの講演会を実施していただきました。
また、標本や書籍も会場にお持ちいただき、あいている時間に見学することができました。
ここでは、その多彩なお話の中から、特にデータベースという観点から大事と思われるポイントを書き留めておきたいと思います。

データとはなにか
観察で得た情報を、生き物のデータベースとして役立てるためには、どういう条件を備えていれば良いのでしょう?
結論からいうと、日時・場所・種類などが正確に記録されていて、年月が経ってから参照できる情報が、データである、ということになります。
「この前、うちの近くで見た!」のようなアイマイな情報は、データではなく、単なる「思い出話」です。
「年月が経ってから参照できる」…ここは重要なポイントです!

生き物のデータベースと、未来のまちづくり
コムラサキというチョウがいます。
♂の翅は、光の角度によって青紫色に輝きます。タテハチョウの仲間で、川沿いなどをすみかとし、幼虫は河原に多いヤナギ科の葉っぱをたべています。
立川でも、また23区内でも、かつては多く見られたチョウでした。
しかし1970年代頃から姿を消し、奥多摩方面へ行かないと見られない状況となっていました。
それが2000年頃から、再び増えていて、立川市でも見つかるようになっています。

矢川緑地へ!

そういう変化が分かるのも、昔の人が正確な記録を積み重ねたデータベースが存在するからです。
データベースの真の価値は、年月が経ってからこそ発揮される、といえるかもしれません。
言い換えれば、いま、生き物のデータベースを整備することは、未来の人たちに向けたタイムカプセルになる、ということでもあります。
将来、自然を取り戻す工事をするときにも、もともとどんな自然があり、どんな生き物がいたのかを理解した上で実施することは重要です。


観察会へ
お話に続いて、フィールドでの観察会を実施しました。
講演会場の錦学習館から、ゆっくりあるいて15分ほどの矢川緑地へ移動しての観察会です。
3月の川上先生の講演会でも、この矢川緑地へ来ました。それから5か月が経って、樹木も草もいっぱいに茂っています。
数日来の暑さもおさまって、晴れ間もあり、観察にはベストな天候にも恵まれました。

シオカラトンボ(左)とオオシオカラトンボ(右)

トンボやバッタ、甲虫のなかまなどの昆虫や、ナガコガネグモなどクモ類、さまざまな生き物を観察できました。

シオカラトンボ♂とオオシオカラトンボ♂、どちらも相次いでみつかりました。
オオシオカラトンボは、より自然性の高い場所を好むといわれています。
比べてみると、オオシオカラトンボは太くて大きく、水色が濃いですね。また、後ろ翅の付け根が黒く色づくのもオオシオカラトンボの特徴です。
飛んでいるときは気づきにくい特徴も、こうしてみると一目で解ります。

ハンノキは、湿地に特有の樹木です。この葉っぱには、メタリックな光沢のハンノキハムシや、白とメタリックのアカスジキンカメムシ幼虫がすんでいました。
クワは、かつて養蚕で多く植えられ、また種子でもよく増えるので、至るところで自生状態でみられます。
このクワの樹によく来るのが、透明な翅をもつ優雅な名前のスケバハゴロモです。

クワの枝につどうスケバハゴロモたち

この矢川緑地は、およそ2ヘクタールのコンパクトな面積でありながら、森林、草地、湿地と、さまざまな植生がセットになっていて、多様な虫たちもすんでいて、生物多様性を
身近に実感できる場所となっています。
こういう場所が拠点となって、周辺の市街地にも生き物がやってくるので、周辺の生物多様性も高くなるという先生のお話でした。
ただ来るだけでは見過ごしてしまう生き物たちも、専門の先生によるガイドがあると、ますます興味深くなってきます。

そして現在、データが着実に蓄積されつつある立川いきものデータベースを、今後も一層の充実をはかっていきたいと、改めて思いました。
さいごに、観察のためにつかまえていた生き物たちをリリースして、今回も充実の観察会となりました。
川上洋一先生、ありがとうございました!

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